「あなたは職場環境に満足していますか?」
そう聞いたとき、いったい何人の人が「Yes」と答えるでしょうか。
人生のほとんどの時間を仕事に費やすのに、生き生きと仕事をしている人は少ない。
そんな職場を変えるべく、2019年にスタートアップした北健人さんにお話を伺いました。
北 健人(Kita Takehito)さん
株式会社ジースヌーズ 代表取締役。
アイシン精機、江崎グリコ、アイシンAWにおける人事部での経験を活かし、人事業務の支援・コンサルティングを行っている。
組織支援プラットフォーム「Askit」を開発し、企業での実証実験を実施。
株式会社ジースヌーズは「あいちスタートアップ創業支援事業」へ認定され、愛知県「ステーションAi」へ入居し活動している。
日本人の「働く意欲」が低い理由
—(元田)3つの会社での人事領域をご経験なさったんですね。これまで見てきて、感じた違いなどはありますか?
(北さん)アイシンは愛知、グリコは大阪が拠点なので、土地柄による人の性格の違いはありましたね。大阪はやはり活発で、グリコには転職者も多かったです。
でも両者に言えた事は、変化に対して保守的で、規格がきちっと決まっていること。食品も自動車用部品も安全性が大切ですから、作業がマニュアルチックになってしまうのは仕方ないと思います。
でも、その社風が人事評価にも影響していて。年功序列の流れや、評価が柔軟さに欠けているのは、あまり良くないと感じていました。あくまで僕が働いていた当時のことなので、今は変わっているかもしれませんが…。
—日系企業だと、やはりどこもそんな感じなんですね。でもそれにお気づきになったのは、外の視点があったのでしょうか?
アイシン精機に勤めていた頃、ブラジルに1年2か月ほど赴任していた影響が大きいです。
ブラジルはラテン系の国なので、やはり日本と働き方が大きく違います。ブラジルだとやっぱり「仕事<人生」という感じで、みんな楽しそうな顔をして過ごしています。
ですが赴任を終えて日本に帰ると、違いにハッとしました。
日本人のサラリーマンって、みんな死んだ魚みたいな目をして毎日通勤している。誰一人として、楽しそうに通勤している人なんて居ないんです。
日本って、世界トップクラスで労働時間が長いのに、働く意欲や”働きがい”はとても低い。
これは個人の問題でもありますが、企業にとっても問題なんです。
「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係(エンゲージメントが高い状態)」であれば、自身と事業の成長に向けて意欲的に取り組むので、結果的に業績の向上が期待できます。
逆に「やらされ感」が強い状態では、いくら長時間働いていても生産性は落ちてしまう。つまり「給料は高くつくのに業績は上がらない」状態となるので、会社にとってはかなり損失です。
なので、職場環境の改善は働く社員のためだけでなく、会社のためでもあるんです。
—なるほど、職場改善は会社側も率先してやるべきことなんですね。 ですが日本では何故こんなに「働く意欲」が低いのでしょうか。
同僚を見ていて感じたのですが、日本人ってなかなか自分の意見を言わないので、不満があっても悶々とストレスを抱えるだけで、改善に繋がらないからだと思います。
言わないけど、みんな何かしら想いを抱えている。
—北さんは意見を言うことに抵抗はありませんか?
僕はニュージーランドの高校へ通っていたこともあり、自分の意見を言うことにあまり抵抗はありません。海外では「君はどう思う?」とまず聞かれるので、意見を言う習慣が自然と身につきました。
—なるほど。日本でも意見を聞かれることもありますが、否定的な意見を言うとあからさまにムッとする人っていますよね。(笑) 海外では意見を言うことで衝突することはありませんでしたか?
海外は多様性な文化なので、色々な意見があることが当たり前な環境でした。
なので、衝突することは無く、建設的な議論を行って合意形成をしていました。
—日本人のストレスは、日本の”奥ゆかしい”文化が起因していたのですね。
そうですね。文化はなかなか変えられませんが、「意見を出しやすい工夫」をしてあげることで、もっと個人のインサイトを引き出す手伝いをしたいと考えています。
外資系企業へ就職しなかったのも、あくまで日本の職場環境を何とかしたいと考えたからです。
社員の「小さな声」を届けるツール
—そうは言っても、声を上げてもなかなか届かないことってありますよね…。本当にパワハラな上司だと「俺は違う」「こいつが言ってるだけだ」ってなっちゃいますし。
確かに、一つの声だけを取り上げるのは難しい。
でも、一つ一つの声に相互に共感し、その意見がみんなの意向を反映したものだと示してあげれば、小さな声が大きく確かなものになります。
真の声を吸い上げるためにも、匿名性は絶対に担保する必要がありますね。
現状では「声が大きい人が勝つ」ことが多いですが、この工夫をすれば「正しい(みんなの想いを反映した)意見が勝つ」状況になります。
意見が採用されやすい環境になれば、「どうせ言っても無駄」「どうせ変わらない」という諦めもなくなり、「自分が変えてやる!」と主体性を持って環境改善を考えるようになるはずです。
そんな改善を実現するべく、Askit(アスキット)というツールを開発中です。
—なるほど。でも沢山ある意見の中から選んで投票するって大変ではないですか?
確かに、ずらーっと60以上の選択肢がある中で選ぶと気が滅入りますし、「一番いい訳では無いけど、共感できる意見」が埋もれてしまいます。
そうならないように、多数ある意見から2つを抽出し、どちらがいいかを選ぶプロセスを考えています。
その意見抽出には、製品開発や実験の評価などで用いられるアルゴリズムを採用し、意見が平等に反映されやすく、傾向が見やすくなるような抽出の仕方を採用しています。
このような方法で、意見に適切な優先順位をつけることで、効果的な打ち手を決めることができます。
Askitの活用シーン
—面白い機能で、職場改善に限らずいろんなシーンで活用できそうですね。
リアルタイムにトレンドが見られることが特徴なので、市場調査やファシリテーションにも活用頂けると思います。
最近ですと、多くの企業で働き方改革やリモートワークが行われていますが、その時に課題となるのが“アイデア・意見”の収集。
リモートだと特に意見を言う場が無くなるので、意識的に場を創ってあげる必要があります。
そんな背景から、課題意識を持たれている企業さんからの引き合いが増えてきています。
また、法人の中には「経済性よりも“想い・意見”を優先する」ような団体もあります。
NPO団体は特にそういった特性を持つことが多いかと思います。そういう場面では意見を抽出しやすくなる当プロダクトが有用かもしれません。
—ファシリテーションで使うと、大人数の会議でも「参加してる感」が高まりそうですね!
そうですね。汎用性が広いプロダクトなので、まだまだユースケースは模索しようと考えています。
現在、α(アルファ)版を中小・ベンチャー企業様から大手企業様までお使いいただいていて、日々改善しながら開発を進めております。
α版は無料になりますので、ご興味がある企業様はお声がけいただければと思います。
さいごに
働き方改革にあたり、各社色々な活動をしているとは思いますが、「本当に効果に繋がっているのか?」が不透明なものも多いのではないでしょうか。
きちんと「働きやすさ」へ繋がる、効果的な手を打つためには、ヒアリングの工夫が必要不可欠です。
Askitによる職場環境改善が、日本全体に広がるといいなと思います。
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